作品一覧
闇鍋と 煮詰めて怪し 南瓜宴
(ショート)
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むたさん GM
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フルトゥーム・スクエアにはさまざまなカリキュラムが組まれている。
古い生活様式や信仰を学び、現在に役立てる民俗学もその一つだ。
●教室内
「魔王出現以前には精霊と共に行う祭事も存在した、と前回の授業でザックリ教えたと思うが……」
民俗学の教師である【ヤテラ・ヌイ】は自前のノートを捲りながら生徒たちに講義をしている。
今も昔も差異はあれども精霊への信仰が主流となっている。
現在でこそ半ばお伽噺に近しい存在となってしまった精霊だが、確実に存在するモノだ。
「残念なことにほとんどの記録が魔王の出現による混乱で消失してしまっている……」
ヌイは悲しそうな表情を浮かべる。
「まぁ当然だな。ただでさえ古い記録だ、仕方ないとしか言いようがない」
一拍おくとヌイはまたいつもの表情に戻る。
「しかしな、先生はこの前面白い資料を見つけたんだ」
ノートの隙間から取り出した一枚のボロボロな紙を生徒に見せながらヌイは続ける。
「これは遥か昔、それこそ勇者暦の始まる前。魔王出現以前に行われていた、とあるルネサンス族の祭事について書かれた作法書の写本だ」
生徒の反応は興味半分、疑い半分の懐疑的な態度だが、ヌイは気にも留めず話を続ける。
「この写本の内容は『恵みの多い月に特別な料理を集落一丸で作り、精霊に感謝しつつそれを頂く』という簡単なものだが……。ここからが面白いんだ、これを行うと土の精霊の一種、クシュクシュという精霊が現れることが多いと記述されている」
精霊という単語が出てきたあたりで生徒たちがわずかにざわめく。
「ただ、精霊たちだって暇しているわけじゃない。おそらく現れるというのは眷属、精霊の分身体のことだろう……」
ヌイはさらに一拍おいて次回民俗学の授業で行う内容を告げる。
「次の授業ではこの祭事の再現を行う。民間伝承の類は非常にあいまいなものが多い、本当か嘘かわからないものを調べるのもまた民俗学だ」
ヌイは言い終わると生徒たちにメモ用紙を配り始める。
そこには祭事に必要な料理『豊穣汁』の材料が書かれている。
「ここに書いてある内の、大釜、大量の南瓜スープは俺の方で用意しておく、君たちはそれぞれが思う『今年一番思い入れのある食材』を次の授業では忘れずに持ってくるように。あ、あと次は屋外訓練場で授業するからそのつもりで、以上」
渡されたメモには『※料理ができる子は手伝ってね』と一言文末に添えられていた。
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参加人数
3 / 8 名
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公開 2020-10-10
完成 2020-10-27
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